六年目の夏*
父が他界して五年余りの時が流れた
一緒に暮らしたのは私が七歳まで
別の人生を歩み始めた父が亡くなる三十年ほど前から
お盆か暮れのどちらかに
地方の名産物を送ってくるようになった
美食家の父らしくどれも一級品で極上の美味しさだった
桃やメロン、さくらんぼ、それと伊豆に住んでいたせいもあり
魚は日持ちのする金目鯛の煮付けや鯵の干物
金目鯛の煮付けは味が甘すぎて私の口には合わなかったが
鯵の干物は絶品だった
お陰さまで魚の美味しさを存分に味わった
父からの贈り物が届かなくなってから六年目の夏が来る
今回描いたのは鯵ではなく鯖の一夜干し
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